1

4/9
前へ
/29ページ
次へ
田端君と私は学年に1組しかない理数科で、しかも出席番号1番同士、基本隣の席。 ぼさぼさな頭に、度の強いメガネ、無口で無表情。 休み時間は大抵本を読んでるか、一生懸命ノートを取っていた姿をよく見かけた。 そんな彼と初めて話したのは…確か、 「大崎さんのソレ、旨そうだな」 彼は私のカバンのチャームを指し示していた時。 それは、私が作ったスウィーツデコの小さなパフェ。 ……この人、喋ったよ! まるで「クララが立った!」位の勢いで驚いたんだよな。 隣になって1週間程経って、必要事項以外で初めて話したのがこれ。 「田端君、お腹空いちゃったの?」 ポケットに入っていたグミをあげたら、照れ臭そうに笑ったその顔が妙に可愛かったのを今も覚えている。 あの頃はまだ私と背丈が殆ど同じ位だったから、しっかり眼が合ったんだ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加