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「お座りになりませんか。お茶淹れますけど」とおりょうちゃんが言った。そういえば全員玄関で立っていた。
「おじゃまするわね。へえ……」
ほしこさんは急にいやらしい顔つきになって、室内を見回した。
「若夫婦の新居って感じね」
そんな表現をされると照れる。おりょうちゃんだって、ある日突然ほしこさんが連れて来たくせに……。
オルガノンとほしこさんが同じソファに座る。俺はスツールに腰かけ、おりょうちゃんがジャスミンティーを淹れてくれるのを待った。
オルガノンは無表情に下を向いている。俺は気になるような気持ち悪いようなで、何も言えなかった。
「お茶は飲むんでしたっけ?」
気づいたようにおりょうちゃんが聞く。ほしこさんは首を振った。
「オルガノンは専用のクッキーしか食べないの。あとは水。でも食べる時間が決まってるから、今は何もいらないわ」
「へえ」
俺は何かを意外に感じた。何が意外なのか、わかってから発言した。
「アントロポスやエンケパロスと違うんだね。あいつら、好きに何でも食べるけど」
「そうね。このコは低性能だから」
『俺』の頭を撫でながら言う。俺は間接的に馬鹿にされた気分になる。
「なんで。新作だって言ったじゃん。新作が低性能?」
「そうよ。これはね、外貨稼ぎに作ったおもちゃなの。任意の人物データを入れて、その人そっくりに作るっていう――ちょっと面白いでしょ?」
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