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電話を切り、私はふと、水森さんが持ってきた桃を思い出した。
水森さんが食べた桃はひとつ。
私が食べた桃はひとつ。
そしてうちに持って帰ってきた桃はふたつ。
水森さんが持ってきた桃は、全部で四つ。おそらく祖母は、ひとつも口にしなかった。
それは、ただの意地。きっと祖母は、祖父の同僚だと言ってやって来た水森さんが、祖父の隠し子だと気付いていた。
「……妻は、強いなあ」
私は一人笑った。ビデオテープは、駅前の燃えないゴミ箱に捨てた。
電車に乗り、次に祖母の家に行くときは苺か何かをお土産にしようと考えていた。
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