卑怯な果実

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  「違うわ。おじいちゃんが死んだときに、私宛てに残した動画よ」  ビンゴだ。  私は興味津々に続ける。 「へえ、何が映ってたの?」 「さあ、見てないから知らない」 「え? なんで? そんな大事なもの……」 「だってうち、ビデオを見られる機械が無いじゃない」  そう言われると、確かにこの家には昔からビデオデッキは無い。  祖父は好奇心旺盛で最先端のものに触れることに躊躇が無く、機械類に強かった。だが祖母は古い人間だ。性格上、これのためにビデオデッキを購入するということも無いだろう。祖父はその辺の、祖母との情報リテラシーの差まで思い及ばなかったらしい。  私はめげずに食い下がった。 「ビデオデッキならたぶん、探せばうちにあるよ。中、見てみようよ」 「いいわよ、別に。どうせ大したもの映ってないんだから。ちゃんとあったところに片付けておいて」  祖母はとことんサバサバとしている。  なんだか、悔しい。  
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