卑怯な果実

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   この夏休み、素敵な予定が詰まっているならともかく、友達の少ない退屈な女子高生には物置の整理など苦でもなかった。  それでもそう思っていたのは最初だけで、この炎天下での埃にまみれた作業は地獄と化した。一日中作業しているわけではないが、三日を費やしてもビデオデッキは出てこない。  庭先に山程の荷物を出してしまったので、ここに来て諦めることも許されず、私は片付けながらひたすらに探し続けた。  終いには母も手伝ってくれるようになった。すっかり開かずの間となっていた物置を整理するのにいいきっかけだったのだろう。年末の大掃除さながらに、いらない鍋など、捨てるものを選別し仕分けている。 「……お母さん、おじいちゃんってどんな人だった?」  そう言えば、母から祖父の話をあまり聞いたことがなかった。  母は首に巻いたタオルで汗を拭きながら答える。その表情は苦々しい。 「あんまりいい思い出無いわねえ。釣りとかドライブとか、自分の趣味ばかりで私とは遊んでくれなかった。自分勝手な人ね。最期の最期、お葬式のときまで散々だったわ」 「何かあったの?」 「あったどころじゃないわよ。相続のことで親戚……に、いちゃもん付けられて、乗り込まれたのよ。相続権なんて無いくせに。ああ、口にも出したくない」  そう言ったきり、母は口をつぐんだ。ビデオデッキを探している理由が祖父関係だと、とても口にしにくい雰囲気だった。  
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