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マイルスは、5歳になったばかりの娘のケリーを連れてバロンシティで最も人気の商業施設にやって来た。それはクリスマスの1週間前の土曜日だった。
地下の駐車場に車を停め、エレベーターに乗った。混雑しているエレベーターが動き出すと、大人たちの間に埋もれたケリーがじっと見上げてきた。その青い目はキラキラしている。プレゼントを買ってもらえるのが待ち遠しいのだろう。そして同時に「この扉が開いたら、寄り道をしないで目的の場所に行くのよ」という圧力をかけているようにも思えた。娘の可愛らしさと強かさを感じ、マイルスはケリーの成長を心底喜んでいた。
エレベーターの扉が開くと、パドックから馬が飛び出すように、一斉に子どもたちが駆けだした。大人たちは大慌てだ。ケリーも負けじとマイルスの手を引き、小ぶりの大股で歩き始めた。目的の場所は動きもしないのに、その足取りは一歩、また一歩と速くなっていく。
暖房が効き過ぎているせいか、おもちゃ売り場に到着すると、マイルスは少し汗をかいていた。ケリーは隣で口元が緩んでいる。「わぁ~!」という歓声が今にもこぼれ落ちそうだ。マイルスは着ていたコートを手に持ち、ケリーと一緒に店内に入った。
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