39人が本棚に入れています
本棚に追加
ぬいぐるみや人形、ロボット、テレビゲーム。子どもたちにとっては、何でも揃う「魔法の国」のように映っているかもしれない。ケリーは他の子どもたちとぶつからないように注意しながら上手に歩き、左右を見渡して品定めをしていた。そして、あるところで足を止めた。ケリーの前には、大きな熊のぬいぐるみ。5歳にもなると、大人びた素振りを見せたり、生意気なことを言ったりもするが、本性はまだまだ子ども。ケリーは、ぬいぐるみが大好きだった。
「パパ、これがいい」
熊のぬいぐるみをギュッと抱きしめる娘の姿を見て、断れる父親なんてそうはいない。
「じゃ、それにするか」
ケリーは「ありがとう」と言いながら、今度は父親にハグをした。マイルスは右手で熊のぬいぐるみを抱え、左手でケリーと手をつないだ。まだ暑いがコートは着ることにした。
「いつまでこうして手をつないで歩いてくれるかな」
そう思ったが、すぐに頭を振った。
「今の幸せを噛みしめよう」
ケリーが不思議そうにこちらを見ていたので「何でもない」と頭を撫でてやった。
最初のコメントを投稿しよう!