プロローグ1

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ぬいぐるみや人形、ロボット、テレビゲーム。子どもたちにとっては、何でも揃う「魔法の国」のように映っているかもしれない。ケリーは他の子どもたちとぶつからないように注意しながら上手に歩き、左右を見渡して品定めをしていた。そして、あるところで足を止めた。ケリーの前には、大きな熊のぬいぐるみ。5歳にもなると、大人びた素振りを見せたり、生意気なことを言ったりもするが、本性はまだまだ子ども。ケリーは、ぬいぐるみが大好きだった。 「パパ、これがいい」 熊のぬいぐるみをギュッと抱きしめる娘の姿を見て、断れる父親なんてそうはいない。 「じゃ、それにするか」 ケリーは「ありがとう」と言いながら、今度は父親にハグをした。マイルスは右手で熊のぬいぐるみを抱え、左手でケリーと手をつないだ。まだ暑いがコートは着ることにした。 「いつまでこうして手をつないで歩いてくれるかな」 そう思ったが、すぐに頭を振った。 「今の幸せを噛みしめよう」 ケリーが不思議そうにこちらを見ていたので「何でもない」と頭を撫でてやった。
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