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そのときだった。
サンタクロースはおもむろに立ち上がり、言葉であって言葉でないような何かを大声で発した。
あたりに異様な空気が充満した瞬間、悲劇は突然に訪れた。
手を振るケリーが閃光に包まれ、爆音とともに凄まじい勢いの熱風が巻き起こったのだ。
吹き飛ばされたマイルスは意識が朦朧としていた。遠くの方からかすかに悲鳴やサイレンの音が聞こえてくる。いや、すぐ近くだ。自身の聴覚が異常をきたしてしまったことに気づくのに少し時間がかかった。身体は瓦礫に挟まれて動かない。全身が焼けるように熱く、腕や脚、頭から血が流れている。うっすらと目を開けると、そこに幸せの面影は微塵もなく、戦争映画で観たことのあるような風景が広がっていた。我に返ると、とてつもない恐怖が襲ってきた。
「……ケリー……」
何度も呼ぼうとするが、声は出ない。マイルスの目には涙が溢れていた。黒目だけを必死に動かすと、ぼやけた視界に真っ黒い物体が入り込んだ。
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