第2章

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 すげなく追い払われた二人が、顔を見合わせて苦笑する。テレビとソファのあるミーティングスペースは、お客さんを()べる程度には片付けられていた。風間と塁はソファに腰を下ろし、早速互いの近況を報告し合っている。 「お前がいつかアイディアを出してくれた色鉛筆メーカーとのコラボ企画の『色見本Tシャツ』、実現しそうなんだよ」 「俺のアイディアってわけじゃないですよ。麻紀と三人で飲みに行ったときに雑談で出た話でしょ」 「いや、『Tシャツにしたら楽しそうだ』って言い出したのは槻橋だよ。俺、こいつ天才じゃねえの、って感心したもん」  そんな話を小耳に挟みながら、晴行は台所に立つ麻紀にそれとなく話を振る。 「仲良さそうだな、あの二人」  麻紀は持参したつまみをプラスチック皿に手際よく並べながら応じた。 「宏憲さん、塁のことは純粋に仕事の上でも評価しているみたいですよ。新人の頃から使える奴だったって。物流部から商品企画部に異動になってからも、塁を部下として引っ張ってこようとしてあれこれ画策したみたいです」 「確かに、あいつが仕事できる奴なのは認める」 「塁が会社を辞めたときは、随分と残念がってましたよ」  そこまで言うと手を止めて、意味ありげな笑顔で晴行の方を振り向く。 「岡島さん、うかうかしてると塁のこと横取りされちゃいますよ」 「え」  思わず、ソファに座って談笑している二人の方を振り向く。     
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