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第2章
「おっ槻橋、元気だったか? 直接顔を合わせるのは久しぶりだよな」
麻紀に続いてオフィスの部屋に入ってきた男が、塁の肩を親しげに叩く。
「あ、風間さん。こちらが我らが代表取締役社長の岡島さん」
「どうもはじめまして。風間宏憲と申します。いきなり押しかけましてご迷惑おかけします」
風間は気さくな様子で握手の手を差し出してくる。その手を握り返しながら、晴行は直感した。この男は「エース」だ。
年齢は三十代の前半というところだろうか。仕立ての良さそうなストライプのシャツにシンプルなシルエットのデニムパンツというあっさりとしたスタイルなのに、はっと目を引くようなスタイリッシュさが滲み出る。いかにもアパレルメーカー勤務らしい、押し出しのいい男だ。
塁のように特別背が高いわけでも、日本人離れした風貌なわけでもない。それでも、彼が入ってきた途端に空間が華やぐ。そこにいるだけで、なんとなく人の心を引き寄せる。そういう存在感を自然に身にまとう人物だ。
「とんでもない。こちらこそ、急なお誘いだったのに来ていただいてありがとうございます。岡島晴行です」
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