運命なんて、明日には消える

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 額縁を模したパネルや、シフォンやリボンで作ったカーテン。造花やガーランドで飾られ、ピンク色のフラミンゴやティアラなどの小道具が並ぶ。そのどれもが、三好が山井を撮った作品で使われていたもの。二人だけの世界は煌めいていたけれど、他の場所へと続くドアを開けた世界も悪くない。  ちょうどお客さんがやってきた。自校と他校の制服を着た女の子三人組。一枚二百円ですと言うと、これで撮ってくださいとスマホを差し出された。 「形に残る写真にすれば、部屋に飾れるよ。想い出ってそうやって時々見返せると嬉しいよね」  と小谷野がセールストークをすると、どうする? と相談し始める。結果、人数分のプリント注文が入った。お客さんたちは並べられた小道具を、あれもこれも可愛いと迷いながら選び、色々なポーズを試している。  今日は年に一度の特別な日だから、他の人たちには負けないとびきり最高の思い出を作らなきゃいけない。そんな熱意とある種の義務感が伝わって来る。今までそういう人たちをどこか冷めて見ていたんだな、と崇史は気付かされた。レンズを通して、少しだけ違う世界が見られるようになった気がしている。 「じゃあ、三回撮ります。はい、チーズ」  小谷野がシャッターボタンを押し、撮った写真をパソコンでその場で見せて選んでもらう。プリントしたものを、カメラのイラストのスタンプが押された封筒に入れて渡した。ついでに展示も見ていってください、と呼びかけたものの素通りされて、なんだか悔しい。     
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