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第2章 放課後のお楽しみ
「あら、今朝も洋ちゃんとやり合ってきたの?」
学校に着くと、さっそく触れて欲しくないことに踏み込んできたのは、もう一人の幼なじみの百瀬桜子だ。ふんわりした柔らかい肩までの髪に、色白の肌、見るからに育ちが良さそうな桜子は、実際、家が金持ちで、お手伝いさんが何人もいるお嬢様だった。和と洋の家のお得意さんの一人でもある。
「あいつが突っかかってきたんだ」
私は悪くない、と言うと、桜子は
「朝から仲良いわねぇ」
羨ましいと言わんばかりの視線を投げてきた。冗談じゃない!と和は桜子に詰め寄る。
「どこをどう取ったらそうなるんだ!?保育園から一緒だった桜子なら私たちがどれほど相容れないか知ってるだろう!?」
「忘れるわけないじゃない、間に挟まれた私はさんざんな目にあったんだから」
「だろう?だから私も、もう同じ所には通うもんかと思って、別の高校を選んだっていうのに…毎朝これじゃ意味ないと思わないか!?」
むぅ、としていう和に、桜子は思わず苦笑を浮かべる。
「……洋ちゃんも、素直じゃないわねぇ」
ポソっと言うが、和の耳には届かなかった。
「何か言ったか?」
ちょっと頭を持ち上げて首を傾げる。
(まぁ、気がつかないわよね)
桜子は、仕方がない、とため息をついて、
「ほら、これあげるから元気出しなさい」
ぴらっ、と懐から一枚の紙を取り出し、和の眼前に掲げる。
さして興味もなさそうに、けだるげに紙を見た和の瞳孔が、次第に開かれる。
「スイーツ食べ放題ご招待券!!!」
紙に書いてあることを理解した瞬間、桜子の手から紙を奪い取り、まじまじとその券を観察した。
「こ…こんなものを貰ってしまって良いのか!?」
「良いの良いの、もらい物だし、有効期限、今日までなのよ。私はちょっと用事があって行けないし、代わりに行ってくれると助かるわぁ」
うふふ、と笑う桜子に、和は感動に目を潤ませた。
「ありがとうっ!!」
ガバッと桜子に抱きつくと、
「ただし、条件があるんだけど」
桜子はくっついてきた和を引きはがし、笑顔で切り出した。
「なんだ?私に出来ることならなんでも言ってくれ!」
意気揚々と応える和に、桜子は笑みを深くした。
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