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「何階ですか?」
ポケットに携帯をしまうのを待ち訊ねると、男性はスーツのネクタイを緩め目線で礼をしながら、八階だと答えた。
ボタンを押すと、ブーンと音がし箱がゆっくりと動き出す。八階に着くと、男性は軽く頭を下げエレベーターを降りて行った。
ひとりになった箱の中で、ふうっと声に出して大きく息を吐く。
もうすぐ、もうすぐ、何かが必ず動く。不安より、期待の方が今は大きい。
目的の十二階に着くと、右から三番目にある部屋の前でインターホンを鳴らした。だが、応答する気配はなく、灯りも点いていない。
おかしい。今日はまだ連絡を取れていないが、数日前から訪ねることは話していたのだ。出かけているということはないはずである。
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