プロローグ

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 夜なのであまり何度も鳴らすのも近所迷惑かと、携帯に電話をかけてみるが、そちらも応答はなかった。  何度目かに、ドア越しに彼女の携帯メロディーが微かに聞こえることに気づいた。  彼女は常に身のそばに携帯を置いている。お風呂なのかなとも思ったが、さすがに来客が来るとわかって入るほど無神経ではないと判断した。  不思議に思いながらも、少し迷ってそっとドアノブに手をかけた。すると取っ手が回り、ガチャッとドアが開く。  無用心である。女性の一人暮らしにしても、警戒心の強い彼女の性格からしても、開けたまま出かけることや、部屋に居るのに鍵を閉め忘れることは考えられない。  中を伺うように覗き込み、彼女の名前を何度か呼ぶが、シーンと静まり返っていた。
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