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パラソルの下で照りつける太陽を感じながら、とろけるような熱気に包まれていると、読みたかった本は20分で読めなくなり、何も考えられなくなった。強制排除されていく思考を見送って、目を閉じて仰向けになると、背中から地球の中心の熱にむかって吸い込まれていくような気がした。このままじっとしていれば簡単に死ねるな、と思った。
死は、どこにでもたやすく転がっている。こんな明るく解放された場所にいても、誰でもほんの少しのきっかけがあればそちら側に行ってしまう。生きることの方がずっと努力がいるのだ。
自分の身体と心をしっかりと結んでいなくては簡単に魂は抜けてしまう。
真っ白になって意識が飛ぶような太陽の下で、何も考えず頭を空っぽにして過ごした。
そうしなければ私は引きずられ、陽子さんの落ちた闇をのぞき込んでしまっただろう。
椎名さんは昨日の夜、言ってくれた。
十年経てば、そんなこともあったと、思い出せるようになる。その時間を、ずっと一緒にいようと。時間はかかるのかもしれない、でも、椎名さんが真莉絵さんの居場所を胸の奥に作ったように、私の中でこの事件も穏やかに思い出せる日が来るのかもしれない。
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