第十七章 Colorful <MIZUKI>

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   椎名さんの車に乗り、近くのショッピングモールに落として貰った。  ほとんどの店はマリンルックやリゾートウエアが大きく売り場を占め、華やかな色彩が溢れていて、週末のリゾート地らしく海水浴に来た若者たちでモール内は賑わっていた。  私は下着や必要なものを揃え、普段は白い服ばかりでまず着ることのない、原色のワンピースと、Tシャツやショートパンツ、ビーチ用のパーカーを選び、サングラスと帽子も合わせて買った。  海に行きたかったので、買ったTシャツと短パンに着替え、素足に白いサンダルを履く。大切なドレスは綺麗に包み、お店で貰ったノベルティの籐籠のバックにしまった。それから本屋に行き、休みに読もうと決めていた文庫本を三冊買い、海岸に向かった。  葉山の住宅街の裏道を一人のんびりと歩く。大通りは人であふれ、その喧噪に疲れ始めていた私は比較的穴場と言われる小さな海岸に向かっていた。ほんとにこんなところから海に出られるのだろうか。グーグルマップでその先を確認しスマホをしまう。  車が入れないその路地は、両側の住宅から大きくはみ出した木々が、適度に太陽を遮り、古い石畳の道に濃い影を落としていた。アブラゼミの鳴き声が四方から輪唱のように響き、サングラスを取り上を仰ぐと、雲一つない真っ青な空から容赦ない太陽の熱が降り注いでいた。目に入った光があたりを一瞬真っ白に変えた。    そして緩いカーブを曲がった先に、海はあった。
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