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四角関係
ある日、電車の中で愛が、「文通をしたい」といってきた。
30年近くの前の話だ。
今みたいにスマートフォンもなければLineもない。
連絡手段は電話とか手紙だった。
電話をかけても愛の父親がでて、
「うちの娘になんの用かね」といわれるのが嫌だった。
でも、どうして文通なんだ。
毎日、大学で会っているじゃないかと疑問に思った。
なんにしろ、愛との接点をもつのが楽しかったから嬉しかった。
愛は中高と六年間も都内のお嬢様系として有名な小妻大学の付属に通っていて、姉が二人いた。
「おとこの子の気持ちを知りたいのよ」といった。
僕だって、共学に通っていたが、オンナの子とはしゃべったこともなかった。
フォークダンスというものが昔はあったが、わざと手を離していたくらいだ。
愛との「奇妙な文通」がはじまった。
特別なことは何もない。
学校のこと、友人のこと、バイト先での出来事なのだ。
でも、僕は嬉しかった。
愛からの手紙は僕の宝物として、全部当時のまま現在も保管してある。
毎日、毎日、大学にいって愛にあって話すのが、顔を少しみるだけでも満足した。
7月のおわりごろ、化学演習のテストがあった。
ほとんどが大学入試のとき勉強したものだったから、高校の化学が得意な僕は愛に教えてあげることにした。
その頃から、四年浪人した危ない目つきをしたホリカワというオトコと二年浪人したズル賢い狸のような男、タヌマが知らぬ間に愛とマモルとの勉強に加わるようになった。
マモルは愛を独占したいが、思わぬ横やりが二本も入った。
こうして、マモルが望まぬおかしな四角関係が始まった。
周りからは、愛が少し幼い容貌でもあることから多浪ロリコン倶楽部と揶揄された。
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