欠片

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『カンパーイ!!』 今夜は騒がしい新入生歓迎会だ。出会いを求める者馴染もうとしている者……。まぁ様々な欲望が渦巻いていた。 「元気してた~?」 化粧濃いめの彼女はそうアレ…だ。 「ああ」 素っ気ない態度にも関わらず絡んでくる。多分酔っているんだろう。 「元カノの私に冷た過ぎじゃない~?この薄情モノ~」 やたら高い声にこの図々しさだ。本当にうんざりだ。気分が萎え早々に帰宅すると絵本を持った妹が出迎えてくれた。再婚相手の子供のため血は繋がっていない。そんな小さな子を置いてまた遊びに出ているようだ。 「眠くない」 そう妹は愚図った。 「その絵本を読んでやるから。だから大人しく寝ような」 面倒だが仕方ない。自分に言い聞かせベットへ連れていった。 「昔々ある所に…」 次のページを捲るとたった、一ページとんでいた。 「どうしたの?」 不安そうに尋ねる。 「ページが足りないんだ。失くしたのか?」 「わかんない」 「じゃあ、他の絵本にするか?」 ううんと首を振る。どうしてもこれがいいらしい。そのページをとばし最後まで読みつくころには眠りについていた。このお話は聞いた事ある話だったが何故かそのページの場面だけが思い出せなかった。次の日また眠れないと妹は言って同じ本を読ませるのだった。 「これは昨日読んだばっかりだろう?」 「これがいい」 その一点張りだった。それは最後のページ抜けていた。昨日読んだばっかりだと言うのに思い出せなかった。大人しい妹が本を破ったりするなど考えられなかった。それに嫌いな本ならわざわざ読ませる事もしないだろうが一応聞いてみることにした。 「この本が嫌いなら捨ててもいいんだぞ? それにページも足りない」 「嫌だ、捨てたくない」 そう言って本を奪い取った。聞いた事のある話それは一昨日も妹にせがまれ読んでいた… いつも通り大学へ行く途中、何故かたどり着けなかった。今まで二年間通い続けている。今さら忘れるはずがない。訳が分からず、とりあえず家に戻った。また、今日も妹はページの抜けた絵本を持ってくる。その絵本を読むたびに記憶が虫食いで荒らされたように闇に染まっていく。波のように恐怖が襲ってくる。 「いい加減にしろ!その本はもう読みたくないんだ!」気づいた時には怒鳴っていた。怒鳴り声にビックリしたのか妹は火が着いたように泣いた。
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