69人が本棚に入れています
本棚に追加
第10章
そして夏が過ぎ秋が来た――。
「汐里くん、お兄さん見つかったのね」
「ああ、うん」
「どこにいたの?響也さん」
「さあね――ふらりと出てきたんだよ」
僕は響也を連れ自宅へ帰り
新学期には2人して大学に戻った。
「それはそうと、この後みんなでお昼でもどう?」
「ごめん――ちょっと先約が」
人波の中一際目立つ
一点のシミもない真白なセーター。
講堂の角でどこぞの王子のように
響也が手を振っていた。
「行かなきゃ」
失踪事件なんて夢だったのじゃないかと
皆に思わせる清々しい笑顔で――。
最初のコメントを投稿しよう!