第10章

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「けっこうです。母さんが卒倒しちゃう」 僕らはひとしきり笑ってから 今度は誰もが腹を探るようにそろって沈黙した。 物言いたげな顔を 時計回りに眺めていると。 「ひとつ確認しておきたいのは――だ」 講義の続きみたいに 仰々しく冬馬が手を上げて言った。 「君らが何を求めて家に来るのかってことだよ」 「何も求めてなんかいませんよ」 「誤魔化すなよ。ほら、片えくぼだ」 僕の作り笑いを見抜いて 由莉が指摘する。
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