第10章

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やきもきする朝吹兄弟を前に 僕は他人事のように首を傾げる。 「僕はただ――もっとよく知りたいの」 もっとよく知りたい。 良い事と悪い事を。 自分の限界を。 そして悪食孔雀たちの生態を――。 食事の手が完全に止まってしまった。 誰もがコーヒーとサンドイッチ以外のモノを欲していたんだ。 「Wem Gott will rechte Gunst erweisen, den schickt er in die weite Welt」 「何……ですか?」 冬馬がドイツ語で何やら言った。 「神はその寵児を遠い旅に送り出す――」 噛みしめるように由莉がそれを訳した。 「アイフェンドルフ男爵の言葉――次の時間に教えるんだ」 冬馬はチラリ腕時計を見ながら 「僕が生徒なら――次の講義はサボって君らといい事するのにな」 溜息交じりに白状する。
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