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「由莉は?」
車が走り出すと
後部座席に座った響也が聞いた。
「あんなパンクみたいな金髪連れて来たら、ご両親が心配なさるだろ?」
冬馬はハンドルを切りながらくくっと笑った。
「家で君らを迎え入れる準備をしてるさ」
「……準備って?」
自分で言い出したことなのに
思わず不安げな声が出た。
「準備って言ったら準備だよ――詳しく効きたいのか?」
僕の胸の動揺は冬馬にも伝わり
きっと後部座席の響也にも伝わった。
「いえ別に……」
僕は気まずくなって窓の外に目をやった。
見慣れた景色が飛ぶように過ぎてゆく。
やがて車はあの日と同じ
深い森の中へと吸い込まれて行った。
誰も知らない誰も通らない
僕らだけの世界へと通じる道だ。
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