第10章

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「由莉は?」 車が走り出すと 後部座席に座った響也が聞いた。 「あんなパンクみたいな金髪連れて来たら、ご両親が心配なさるだろ?」 冬馬はハンドルを切りながらくくっと笑った。 「家で君らを迎え入れる準備をしてるさ」 「……準備って?」 自分で言い出したことなのに 思わず不安げな声が出た。 「準備って言ったら準備だよ――詳しく効きたいのか?」 僕の胸の動揺は冬馬にも伝わり きっと後部座席の響也にも伝わった。 「いえ別に……」 僕は気まずくなって窓の外に目をやった。 見慣れた景色が飛ぶように過ぎてゆく。 やがて車はあの日と同じ 深い森の中へと吸い込まれて行った。 誰も知らない誰も通らない 僕らだけの世界へと通じる道だ。
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