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「小栗隆一君、君は、半陰陽ではないか?」
息が止まった。
「どう……して……」
「匂いでわかる。以前にも、会ったことがあるから」
隆一はぱくぱくと口を動かしながら、言い訳の言葉を探した。
けれど混乱した頭に、適当な言い訳は浮かばなかった。今は息の仕方すら、思い出せない。
「やっぱりそうなのか」
夏目が文机をまたぐようにして、こちらへやってきた。そして隆一の首の後ろに手を添える。
「ち、違う……」
怯えた声が出る。首の後ろに触れられただけで、もう逃げることはできないと思った。
「違うはずがない、確かめてみようか」
夏目のもう片方の手が着物の胸元から忍び込み、脇の下を通って背中へと回る。
胸と胸が合わさり、耳元に熱い吐息がかかった――。
半陰陽――。
それはこの国に古来よりある、性別のひとつだ。男でも女でもない、しかし子を産むことのできる性。
見た目は男に見える場合も女に見える場合もあるが、数カ月に一度発情し、その強い匂いで他者を引きつける。
体が成熟するまでは、通常の男児または女児と見分けがつかない。けれども成長し発情期を迎えると、その違いは明らかとなる。
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