【第三章:風の狩場とカルマの谷 五】

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【第三章:風の狩場とカルマの谷 五】

※  ※  ※  虹の子供たち、良くお聞き。  この世界は、もともと一つのものだった。  光も闇も色も無く、ただ一つのものだった。  世界は最初から全てを持っていて、それだけに何も無いのと同じだった。  考えてもみなさい、世界のあらゆる物を持っていれば、  他に欲しいものなど何も無い。  そこに自分一人しかいなければ、誰かにそれを与えることも無く、  誰かから何かを受け取ることもない。  全てが満たされたこの世界の感情は、ただ愛だった。  だがそれを表す術を持たなかった。  愛しか感じた事が無く、愛以外を感じさせるものが他になかったからだ。  それはまったく、何も感じていないのとよく似ていた。  全てであり無。愛であり無情。  それがこの世界のはじめの姿だった。  ある時世界は、意思を持った。  自分自身を感じたいと。  その時、世界は分かたれた。  最初はそう、光と闇に。そして天と地に。  それから我々、色と影を持つもの、  天と地の間に生きるものが創られた。  だからこそ、我らは虹のごとく様々な色と心を持ち、  自分とは姿形の違うものをも愛することができるのだ。  虹の子供たち、良くお聞き。  天と地を繋ぐ光の環、虹は誰も踏みにじることはできない。  だが我らが天からの光を受け、生きるこの大地の足元には影が、  その足の下には大地と闇が、いつもそこにあることを忘れずに。  全てのものを受け入れ愛することができる者だけが、  虹の橋を渡り、この世界を一つに繋ぐことができるのだよ。  どうか忘れないでおくれ。  我々はもともと、ただ一つのものだった。  分かたれたのは、お互いと、自分自身のすばらしさを知るため。  愛が何かを感じるため。  どうか思い出しておくれ。  我々は、この世界そのものだということを。  思い出すまで永遠に、輪廻の環の中繰り返し、  違う姿で生まれ変わる。  虹の子供たち、良くお聞き。  我らはこうして伝えよう。  未来永劫忘れぬように。  光も闇も同じもの。  全てを一つの環で包み、同じように愛しなさい。  忘れてしまえば永遠に、我らは分かたれ続けるだろう。  そうしていつか、世界の全ては、無に還る。  思い出すなら一つに還る。個でありながら、全てに還る。   世界の全てが、愛に還る。 ※  ※  ※
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