【第三章:風の狩場とカルマの谷 三】

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「さあ、着きましたよ。ここが『マヌルの(さと)』です。  ……先に降りて村に向かって下さい。私は駐車してきます」  ブラッドが一瞬何か思い出したような顔をして、そう告げた。  柵に囲まれた村はほぼ完全な円形で、その中央から柵に向かって、放射状に八本の太い道が伸びている。  道の両脇には中央に木の杭が立てられた三角錐形の白い小さなテントが点在しており、やはりいくつかの色を使った幾何学模様で、動物などの絵柄が描かれている。家々独特の模様があるようだ。  これらもインディアンのティピーに良く似ていたが、テントの真上には何かクルクルと回る皿のようなものが浮いており、それはどうやら換気と雨除けの役割を果たしているようで、地球では見られない性質の道具だった。  テントから出てきたり、すでに道沿いでシルフのメンバーたちを出迎えてくれたネコタミたちは、巨大な柵の迫力ある様とはまた違い、皆朗らかで気さくな様子だ。  それでもどこか勇猛な気質も感じさせる顔つきや出で立ちで、タオの街のネコタミが『飼い猫』なら、マヌルの住民は『山猫』とでもいったイメージだろうか。  村全体の雰囲気も、お祭りというよりは歓待の、共に戦う同志を迎える喜びに満ちている。  しばらく歩くと、やがて村の中央に位置する、一際大きなテントが見えてきた。  規模は違うが他のテントと同じく円錐形で、その中央には大きな木の杭が何本か立てられている。  テントの上部には大きく色鮮やかに、幾何学的にデザインされたグリフォンが描かれていた。  入り口の布は円形に大きく開いており、内部から歓迎の声がする。  初めての土地では仮面をかぶっていたほうが無難だと学んでいたスズは、あまり目立たないようにシルフのメンバーの内側に隠れるようにしてギンコの後を歩いていたのだが、そのまま皆について大テントの中に入っていった。 「お帰り、マイ・サン!!」  そう叫んで皆の目の前に飛び出して来たのは、巨大でカラフルなミノムシだった。
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