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「この緑と青の多い子は誰だね?」
カラフルなミノムシはふいにスズに顔を寄せて聞いた。
仮面越しに見つめるその瞳は、ずんぐりとしたその体躯からは想像もつかないような鋭さを秘めている。
そしてどこかで見た事のある、紅く深い色をしていた。
「オーラの色で言ったって普通伝わりませんよ、あなた」
そう言って奥から出てきたすらりとした美しいネコの女性は、はっきりとした黒と白のハチワレ模様だ。
目は空のように澄んだ青色をしている。
アクセサリーは数多く重ねて身につけてはいるのだが、服の方はタイトなデザインにカラフルなビーズなどが幾何学模様に刺繍された、洗練された優雅さすら感じる物だった。
頭の中で二人が足されて理解した。
彼らはきっと、ブラッドの両親だ。
「ふむ。そうだったねウルル。
ついね、見えると言ってしまうね。
あれかね。やっぱり新しいマレビトさんかね。ほうほう」
右手を差し出しながらリズミカルに頭を左右に振っている。
仮面の横から少しでも顔が覗けないかと思っているようだ。
年齢的にはたぶん、いい歳のおじさんなのだろうが、その雰囲気は子供以上に子供にも感じられる。
性格は絶対にお母さん似なのだろうな、と苦笑しながらスズは仮面を外し、「はじめまして」と右手を差し出した。
この世界でも挨拶である握手は、『あなたに爪は出しませんよ』という、相手に対して敵意がないことを表現することから始まったものらしい。
「ほうほうほう」
そう言いながらスズの手を両手で握りしめ、ぶんぶんと振った。
「黒髪だね。黒い目だね。ひょっとして日本人かね?
地球の東の端っこの、日の出る国から来た子かね?」
嬉しそうにさらに顔を寄せてきた。
ほとんど鼻と鼻が触れそうだ。
はい、と言いながらスズはちょっと腰が引けている。
その日本では会ったばかりの相手と、ここまで密着して挨拶する事はそうそうない。
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