【第三章:風の狩場とカルマの谷 六】

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 一瞬、カラフルな火花が散ったかと思うと、炎は虹色に燃え上がり、まるで天に昇る龍のように、回転しながら夜空を目指して高く高く飛び上がっていった。  やがてそれは空中で花びらが舞うように分散し、キラキラと宝石のような光を放ちながら消えていった。  まるで地に落ちた流れ星が、時を経て本来の住処である天の河に還って行ったかのようだった。  皆、しばらく声も無く星空を見つめた。 「このように、天と地、光と闇があるからこそ、その間に存在する、我ら影と色を持つ者がこの世界で生きてゆくことが出来るのだよ。  固に遮られた闇と、形を持たない光、その間にある我々の命と心は、柔らかい。  そして固である肉体と形に縛られない魂を持ち、多種多様な姿と色を持つ。  だが元々は一つであり、全ては今も、未来も永劫に繋がっておる。  この『生命の環』のように」  マヌルはそう言って、胸に下げた大振りの首飾りを両手で包むようにして持ち上げて示した。  それは八本の車軸を持った、金色の車輪のような物だった。  中央の小さな円には紫の石がはめ込まれ、それぞれの軸の間には天上から時計回りに、水色・緑・黄色・桃色・赤・橙・黄緑・青と、八色の丸い石が光っている。  その眠虎の大陸の八つの国を表す石たちは、蜘蛛の糸のように細い、金の針金のようなものに支えられているようだ。  環の下部には三つの羽飾りが付いており、その羽飾りを支える部分や首に下げる紐の部分には、紅色と青緑のビーズ状の石が交互に通されていた。  八方向を示す車輪のような軸がある以外は、地球で見る、インディアンのドリームキャッチャーにそっくりだ。 「我々の住む国も、遮られているようで、全ては母なる大地や水で繋がり、循環している。  我々の魂もまた、個々の体で遮られているようだが、全てが父なる天の上で繋がっており、他者と自分の違いなど無い。  それを思い出す時まで、我らは何度でも、違う姿で生まれ変わるのだ。  これを虹の車輪の生まれ変わり、『輪廻転生』という。
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