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「やれやれ。我輩の魔獣同士、もう少し仲良くできないものかな、キアスよ」
マルコが噴水の縁に餌箱を置き、キアスと呼ばれた狼の頭を撫でる。
「ああん、マルコっ! マルコ大好き!!
もっと撫でて! お腹撫でてっ!!」
キアスが羽をたたんでお腹を出して寝転び、完全な服従のポーズをとった。
「二重人格すぎだろ。……女って怖え」
ダンテが聞えよがしに言った。
「そう言えば、キアスも青い羽だね」
スズが楽器を置き、キアスに近寄る。
最初にマルコの餌やりを手伝った時はさすがに恐ろしかったが、キアスはマルコの姿を見た途端にいつもこのような感じになるので、今ではもう怖がる必要もなく、大きく賢い飼い犬を見ている感覚だ。
もっともダンテがいる時は今のように『ご主人様の愛・独り占め防衛戦』が勃発するため、ある程度離れていたほうが無難ではあるのだが。
「なぁに? スズ坊やは羨ましいの?」
キアスがくるりと身を起こして、青い羽を広げて見せた。
最初から敬意(というか恐れ)を持って接したせいか、キアスはスズのことを格下、良く言えば“守るべき対象”として認識しているらしい。
「うーん……。そうなのかな」
スズはチラリとギンコの銀髪やフーカの金髪を見て考える。
髪を染めたいと思ったこともあるが、自分がもしそれをするんであっても、高校を卒業した後だと思っていた。
こちらの世界ではたぶん、それも自由になるのだろう。
「なんだかみんな、自分の色があっていいな、と思って」
キアスの頭を撫でながら、微笑んで言う。
その途端、頭を何かに鷲掴みにされた。
「何だ、オレと同じ、黒が気に喰わないってのか小僧……」
ギリギリとダンテの三本足の一本がスズの頭に食い込んだ。
「いだだだだっ、いや、そうじゃないんだけど、日本ではみんな黒髪だからさ、なんかみんな同じに見えるっていうか」
咄嗟に頭に手をやると、ダンテは持っていた布袋をスズの頭の上に残して、再びマルコの肩に飛び乗った。
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