【第三章:風の狩場とカルマの谷 二】

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 川の下流、進んで来た道の方を見れば、程良い車間距離を置いて何台もの自動車が同じように丘の上を目指して走ってきている。  タオたちの町、『龍の吐息』のある町とその周辺から、多くのネコたちがこの狩場の『岩イノシシ狩り』のために集まって来ているのだ。 「こうやって上から見ると、道の色がはっきり判りますね……!」  止むことのない風に負けないよう、少し大きめの声でスズが言う。  この渓谷、そして丘の色もそうなのだが、道は白く輝いていた。  これはこの『風の国』の石、(そん)石の色なのだ。  その白いラインは、スズたちのいる丘から遠く、町や村を繋いでいる。  そして丘の下、遥か遠くまで拡がる緑の森を分断するように、西と北北東にも伸びていた。  北上方の森は僅かに紅葉しているようだ。 「この道はね、石道(せきどう)っていうの。  元々は石を切り出して出来た、っていう話なんだけど。  どの国にもこういう道路があってね、だいたいそれぞれの国の石の色をしてるんだよ」  ギンコがスズの隣で指をさして言う。 「それからね、あっちに見える山の向こう。  あれは龍人(リュート)や龍神族の住む場所だから、入っちゃダメだよ」  北北東に向う道の北西方面には白い山脈が連なっており、心なしかその山頂は薄紫色の霧で覆われているかのようにも見える。 「もっとも、『魔境』には入ろうと思っても入れないとは思うけど。  ……危険な魔獣もいっぱいいるからね。  まあ入ったとしても高確率ですぐに食べられると思う」  怖いことをさらりと言った。
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