のろまなエレベーター

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 エレベーターはすぐに止まり、一階下の経理部のフロアに停まった。扉が開くと、照明に照らされたホールには誰もいない。寝ぼけて見当違いの階数を押してしまったのか、と確認しても光っているのは目的の一階の表示だけだった。  四十七階、財務部。四十六階、開発部。四十五階、総務部。  おかしな事に各フロアへエレベーターは停まった。けれど乗って来る人間はひとりもいない。こののろまめ、メンテナンスを頼まなくてはいけないぞ、とK氏は思った。そして四十四階、営業部のフロアでまたしても扉が開いた。K氏はうんざりしてすぐにボタンを押した。しかし、扉は開きっぱなしのまま定員オーバーの警告音が鳴った。流石のK氏も異常を感じ、エレベーターの外へ出ようとする。その瞬間、エレベーターの扉が閉じた。警告音が鳴り響く中、閉じ込められたK氏は管理会社に通じる連絡ボタンへ手を伸ばす。  だが、それは間に合わなかった。エレベーターは想定外の重みに耐えかねたかのように急速に落下し、粉々になった。
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