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輪廻
人は転生する。
誰にでも、「以前の姿」というものが存在する。いわゆる「前世」というものだ。
それは人間とは限らない。犬や猫だったり、昆虫だったり魚だったり。草木の場合もある。
人は物凄い痛みと共に、この世に生を受ける。生まれ落ちるとき、あまりの激痛に、泣き叫び、前世のことを一切忘れてしまうのだ。自分がどんな人間だったか。どんな動物だったか。虫だったか。忘れてしまう。
初めて来た場所を懐かしいと感じるのは、以前自分が確かにそこを訪れているからだ。
初めて会った人を懐かしいと感じるのは、以前自分が確かにその人と会っているからだ。
前世の記憶は欠片となって、たびたび私たちを刺激する。デジャヴを感じて首を傾げる。あっと思う。思い出そうとしても思い出せない。現世で前世を思い出すことが出来たとしたら、今より世界は荒れるだろう。人が復讐のために跋扈する世の中になる。
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