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ひっ……、せ、先生……。
隣の剣上に助けを求めたかったが、恐怖とおぞましさで、声は喉に詰まったようになり、体は凍り付いたように動いてくれない。
友一が抵抗しないせいか、手はだんだん大胆になっていく。友一の薄手のハーフパンツの上から双丘を揉んでくる。
やだ……、助けて! 先生っ……!
心の中で叫びながら、友一が剣上の手を強く握った次の瞬間、不快な手は離れ、男の悲鳴があがった。
「……ってぇ……やめ……折れ、折れるっ……!」
見ると剣上が男の手をひねりあげている。痴漢の存在に気づき、助けてくれたのだ。
剣上はすさまじい怒りのオーラを発しながら、冷たい声で痴漢の中年男を恫喝した。
「オレのものに触りやがって……!」
剣上はもともと冷たく見えるタイプの美形である。怒れば、その迫力たるや半端ない。
このままだと痴漢男の腕を本当に折ってしまうだろう。
「せ、先生、もういいよ。ね、ほら、みんな見てるから」
友一は必死に彼をとめた。
事実、周囲の人たちは何事かと好奇の目を、友一たちに向け始めている。
剣上は舌打ちすると乱暴に男の手を離した。
痴漢男は慌てふためいて、人混みをかき分け逃げて行った。
「友、ここから離れよう」
剣上は友一の手を再び強く握ると、人の波に逆らうようにしてその場を離れた。
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