第5話 『行商のおばちゃん』

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おばちゃんの海産物を選ぶ眼は、そんじょそこらのもんには、かなわない。雨の日以外おばちゃんは、一年中行商に出かけていた。「たけちゃん、おばちゃん来たから、アジ3びきとコロッケ6つ買うきて。」とおかあちゃん。おばちゃん手作りのコロッケもうまかった。「うん、わかった。買うてくるわ」と僕は、おばちゃんの外に出ておばちゃんのリヤカーのそばまで行く。「おばちゃん、アジ3びきとコロッケ6つちょうだい。」「たけちゃん、いつもおおきによ。今日のアジもうまいで。塩やきにするんかいの。刺身でもいけるでっておかあちゃんに言うてよ」「わかった。おおきに」と僕。お金を受け取ったおばちゃんは、しわくちゃの陽にやけた顔で「おおきにね。また、たのむよ。」とリヤカーを押し始めた。僕ら勝浦小学校の生徒は、ほとんど知っていた。あの名セリフを。「なんぞや、かんぞや、いらんかいのし~。」チリン、チリン。 第5話 終わり
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