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「あのさ」
「なに?」
「ぼく、駿河さんのこと好きになりそうなんだ」
何よりもまず、ぎょっとして、女の子はぼくを見た。
そういうのって、今じゃないでしょ? 成神くん、そういうのわかるひとでしょ?
そういうニュアンスの、「ぎょっ」だ。
その「ぎょっ」は正しいよ。
そう伝えるように、ぼくはうなづいた。
「だからさ、ここらで本格的に友人になってくれないかな」
「……なにそれ」
彼女の右手の拳が固くなるのを見逃さない。今にもぼくをグーで殴りそうで、前言撤回、惚れそうになる。
「前言撤回」
素直であることは大事なので、即言葉にする。
ますます拳が固くなったのを見て、早口で言葉をつないだ。
「ここらで恋人同士になっとこうとか、そういうんじゃなくて、好きになるなら、もっと、本格的にきみを好きになってみたいんだ」
拳がゆるんだ。
「……変わってるね。成神くん」
右手の拳がだいぶゆるんだところで、彼女は左手のコンビニ袋をがさっと鳴らした。
「でもいいよ。そういう感じふくめて、タイプなんだ。とりあえず、溶ける前にアイス食べたいから、はやく学校戻らない?」
「わかった」
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