第62話『学生帽子と学生カバン』

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「なあ、イサオ君、そのズボンもものとこ普通のより太ない」と僕はイサオ君に聞いた。イサオ君は、前にも書いたが中一の時から友達で那智山から通っている。エレキも持っていた。このイサオ君今は某楽団でサックス吹いてます。昔から音楽の才能は抜群でした。顔はガリバーやけど。「これ、知らんの、ツータックいうてこのベルト通すとこの下2段階に折り込んだあてニッカボッカみたいにモモのとこ太なったあるんや、格好やややろ、ナカシャもこれやで」「ほんまかん、かつこええやん、ナカシャもそうかん、俺も買おう」と僕。イサオ君がツータック履いていたのも驚いたが、それよりあの3バカトリオのナカシャが履いていることが腹たった。負けられんと思った。その日の帰り道、ナカシャに聞いた。「ナカシャ、ツータックはいたあるん、どこでこうたん」「あっ、これN洋服店で売りやるで、それからこれも」とナカシャは上着の裏を見せた。そこには龍の刺繍が入っていた。「何やそれ、格好ええやん。」「タケちゃん、格好ええやろ、あんまり派手な刺繍は阿寒やろうけど、これくらい何気なく入っているやったら大丈夫やで、これもN洋服店やで」「ほんまかん、あのおばさんとここんなんも置くようになったんや、今度こうてもらおう。」
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