第93話『思い出の金魚売りのおっちゃん』

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僕の記憶には、おっちゃんは、40歳位で顔の色が薄黒く、角刈りで、左のほほに大きなほくろがあり声は、だみ声で、「いらっしゃい~、頑張ってすくてよ~」と言うのが口癖だった。僕たちは買ってもらったばかりのライダー号に乗りタコちゃんとこからおっちゃんとこへ行った。おっちゃんは近くに軽トラ停めていて、その側に長方形のステンレスを貼り付けた金魚すくいようの桶みたいなのを置いて、その後ろにイスに座りお客が来るのを待っていた。僕らは側にライダー号を並べて停めて「売って~、おいちゃん、金魚すくい売って~」とおいちゃんにそれぞれ100円を渡した。(勝浦の子供はお店で何か手に入れたりするときは、売って~と言っていた) 100円で5回金魚すくいが出来る。桶の中には、黒や赤色の金魚や出目金、そして鯉の小さいのが元気に泳いでいる。おっちゃんから、ぽいを受け取り、ステンレスで出来た金魚受けの入れ物に水を半分ぐらい入れ、ぽいを上手に金魚に近づける。おっちゃんは「ようけすくてよ~」とだみ声で応援する。 僕らは1回で1つのぽいがやぶけるまで大体3匹くらいすくう。だから終わったら約15匹くらい入れ物の中に入っている。すくった金魚は持って帰れる。全然すくえなかったもんにも、おっちゃんは、金魚を5匹くらい袋にいれてくれる。気前のええおいちゃんだった。時には家族連れが、又あるときはカップルがキャッキャ言いながら金魚すくいを楽しんでいた。僕の家とタコちゃんの家には中庭があり小さいが池があった。2人ともそこで金魚や鯉を飼っていた。ぼくとこの池にはその当時取ってきた錦鯉が大きくなり何匹も泳いでいた。今も何匹かいる。ナカシャとこは池はないが大きな水槽に金魚を飼っていた。僕らの成長と時代の流れでいつの間にかおいちゃんの姿も消えてしまった。毎週は行かなかったが、1ヶ月に1回くらいは僕らは行っていた。今花火なんかの金魚すくいを見るとあのおっちゃんを思い出す。僕ら3バカトリオの小学校低学年の頃の懐かしい思い出である。これも良き那智勝浦町の景色であった。 第93話終わり
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