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 恐ろしいほどに全てが順調だった。何もかもが上手くいきすぎて、却って不安になるほどの恵まれた状況だ。  けれど、エミリオの心は満たされているとは言い難かった。原因はわかっている。至極単純で情けない理由だ。そしてそれは、一時的ではあるけれど、この冬の帰省で解決できる。    顔をあげて窓の外に目を向けると、雪の積もる校庭の向こうに迎えの馬車が見えた。  暖炉の火が消えていることを確認し、大型の旅行鞄を肩に提げて、エミリオは監督室を後にした。  
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