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 深々と降り積もる雪が街中を真っ白に染めあげてゆく。学生寮の監督室から庭園を見下ろして、エミリオは小さく息をついた。  今年の秋、エミリオは晴れて最高学級に属することになった。三年前なら誰も想像し得なかったことだろうけれど、素行を正し、教員や寮生からの厚い信頼を得た結果、最高学級に属する中でも限られた優秀な学生のみが選ばれる監督生(プリフェクト)にも任命された。目標を持って本格的に勉学に勤しんできたおかげで、既に大学への進学も決まっている。  全てが地道な努力による賜物ではあるけれど、その支えになっていたのがたった一人の少女だということは、エミリオだけの秘密である。  一方で、兄のウルバーノは大学に在籍する傍らで、父の資産の一部を運用した発展途上国の支援企業への投資が成功し、莫大な利益を得ていた。  お世辞にも裕福とは言えなかったエミリオの家は、瞬く間に社交界で一目置かれる存在になり、ウルバーノの元には来たる社交シーズンに向けて、夜会への招待状が山のように送られてきているという話だった。
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