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結局コラムを更新できてしまうほど時間は余り、取材から戻って来て「どーだった!?小雪ちゃん的に何が好み?一緒に選び行こうよ」と尋ねる今次さんに電流パッドの魅力をつらつら語って差し上げた。
そのうちようやく定時が近づいて来て、今日も濃い一日だったとため息を吐きながらスマホを手に取る。
そういえば湯下さん、どうしたかな。
無事に取材は終わったかなと心配になったところで、その張本人からメッセージが来ていることに気づいた。
イライラにかまけて全く気にしなかったことを後悔しながら、慌ててLINEを開く。
やだ、2時間も前じゃん!道にでも迷ったのかな!?いつも私が先導切ってたし、電車も乗り継ぐから・・・
『取材終わったら飲みに行くから』
もはや母の気持ちでメッセージを確認した直後、送られていた内容に文字通りガクッと肩を落とした。
そうですか、報告ですか。
本当に母じゃん、これじゃ・・・
『明日も仕事ですし飲み過ぎないようにしてくださいね。チームの方に迷惑かけちゃだめですよ』
潰れた湯下さんを送るのは、壮年期のおじさま方じゃちょっと大変な気がする。
にしても、向こうについてすぐそんな話になったのか?
時間的に出がけから余りたってないとわかり首を傾げると、待ち構えていたように既読の文字が浮かんだ。
『チームって?』
『草野球チームの皆様と行かれるんですよね?』
『違うよ』
湯下さんの主語のなさは今に始まったことじゃない。
仕事上、一番必要な「文脈」という言葉そっちのけで始まった会話にも突っ込むことなく次を待つと、すぐに
『定時であがれる?』
というメッセージが浮かんだ。
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