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そう聞くってことはいつもの路地裏飲み会、しかも私も参加が決まってる体か。
野上さんの一声で集められたか、一人で取材に挑戦した湯下さんへの労いか・・・
どちらだとしても、普段の私ならすかさず了解しているところだ。
でも、何度も言うように今はとにかく下着を変えたい。
デスクワークだけならと思って我慢してきたけど、さすがにこのまま飲みに行くのはいろんな意味で気が進まなかった。
『せっかくですけど、今日は用事があるので遠慮させて頂きます。皆で行ってきてください』
ちょっとそっけなかったかな?
濁しておくので湯下さんもさらっと流して下さい・・・
そう願ったけど、次に来たのはメッセージではなく着信だった。
ちらっと室内を見渡してから素早く隅へ移動する。
仕事がら電話がかかって来ることなんてざらだから、誰も気に留める様子はない。
それでも小声で出ると、開口一番に湯下さんが『皆って何?』と聞いてきた。
向こうから切り出した話のわりに、問いかけが多いこと。
「路地裏の飲み会なんですよね?」
『違うよ。お前に話があって。でも駄目ならしょうがねえな・・・」
まるで誰にも聞かれたくないように、すぅっと下がったトーンに私も息をひそめる。
湯下さん、本当に何かあったんだろうか。
さっきの様子もどこかおかしかったし、何より、今日は一度もあの笑顔を見ていない。
どう考えても楽しく飲みに行こうという雰囲気の誘いじゃない以上、無下に断ることもできず、壁際の時計を見上げる。
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