ブラックオフィスレディ 【R-18】 ep.9-1

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まあいいけど、と興味が薄れたようにメニューに目を落とす湯下さんを見て、その雰囲気が気にかかった。 ・・・話があるって言ってたけど、思ったよりも深刻な内容なんだろうか。 こっちから切り出して良いものかどうか迷っていると、湯下さんは店員さんを呼び片っ端から注文をし始めた。 私が何も言わずとも、定番といえるメニューをどんどん頼んでいく。 って、今日はいない圭や光江さんが好きなものも入ってるし・・・ あっという間にテーブルからはみ出そうに並んだお皿を前にジョッキをぶつけると、一気に半分ほど飲み干した湯下さんがふとポケットに手を突っ込んだ。 「そーだ、これハワイの土産」 「あっ、ありがとうございます」 信頼できる相手からの贈り物は、やはりなんの躊躇いもなく受け取れるものだ。 それも海外のお土産となれば、ワクワクした気分でいっぱいになる。 疑いなど微塵も持たず、ハイビスカスの絵柄がついた可愛い包装紙をゆっくり開けていくと、出てきたのはチューブ型のクリームだった。 「これブランドのボディクリームじゃないですか」 「なんだ、知ってんのか?姉ちゃんが、これ買ってきゃ間違いないっていうから」 今年初めに発売されて、現地でたちまち人気が出たといくつもの雑誌で紹介されてたものだ。 確か篠崎さんのとこのエアーでも特集してた気がする。 「すっごい嬉しいです!使ってみたかったんですよね」 思いがけず話題の商品に出会え、テンションが上がった私は心の中で見たこともない湯下さんのお姉さまに頭を下げた。
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