【3】

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「じゃあ……『伯爵さま』と、これからは呼ぶべき?」 「トゥーリ……おまえ、わざと言ってるだろう」  膨れっ面になり、ますます尖ったその可愛らしい唇に、堪え切れず俺はキスをする。 「わかってるよ。あなたはもう俺に、そうやって呼ばれたくはないんでしょ?」 「わかってるなら……!」  言いかける唇を、俺は再びキスで塞いだ。 「だって、そう呼んじゃったら俺の抑えが効かなくなる」 「え……?」 「だから、いつも我慢してたのに……そうやって人のこと煽るんだからなー……」 「何だ、それは……」 「よーするに、俺このまま暴走してもいい? って、訊いてるんだけど?」  実はもう我慢の限界、とニッコリ笑ってみせた俺を、一瞬、呆気にとられたように見下ろして。  次の瞬間には、くしゃっと表情を歪めて苦笑いを浮かべてみせる。 「本当に、おまえはいつもそればっかりだな」  苦笑しながら、俺の耳元に唇を寄せた。 「…でも、私だって今そればかり考えてた」  そして顔を見合わせて、一緒に吹き出す。  まるで子供のジャレ合いの延長のような雰囲気で、自然に唇が重なった。 「隣が私の寝室なのだが……場所を移さないか?」  合間に差し挟まれた言葉に「うん賛成」と返しながらも、それでも俺はキスをやめない。イタズラしてる子供の気分で。 「だから、トゥーリ……!」  困ったような声になりつつも、それでも嫌がっていないことがわかるのが楽しい。 「もう……そんなに“お預け”にされたいのか?」 「それはヤダ」  ようやく俺は唇を離すと、そのままぎゅっと、目の前のその身体を抱きしめた。  伝わってくる熱だけでのぼせそうになる、そのくらい、このひとが愛しくてたまらない。  だから俺は、その耳元に囁いた。火照る吐息に心からの想いをのせて。 「愛してるよ。――レイノルド」 ※【Ⅰ章】完結、【Ⅱ章】に続きます。
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