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景が文化祭についてのあれこれを考えている間に、学校へと到着した。自分のクラスの自分の席へと座ると、おもむろに支度を開始した。
クラスにはすでにほとんどの生徒が登校してきているが、誰も景には声をかけない。
景は、とても淡白な人間だ。自分が必要だと思った人間とは会話をするが、無意味と判断した相手とは一切会話をしない。
しかも、その必要だと判断する基準は、自分にとって得になるかならないかである。
必然的に、クラスで浮いていくのは当たり前で、しかし景自体も浮いていることに何の関心もない。
景が損得なしに話す相手といったら、幼馴染の莉菜だけだ。
白石莉菜は、景が世話になっている養護施設の園長の娘で小さい頃から一緒な分、身内ともいえる存在だ。
「それじゃあ、出席をとります!」
元気な声で、現実に引き戻された景は、その発信源を見た。
肩まで伸びたセミロングの黒髪に、眼鏡をかけ、ジャージ姿の女性が黒板の前に立っている。担任の長谷川郁美だ。
その溌剌で男女分け隔てなく接する性格と美貌で、学年関係なく人気がある。
クラスで浮いている、というか一匹オオカミの景にも積極的に話しかけてくる、どこまでも“先生”な先生である。景としては、若干鬱陶しい。
そんなこんなで、真面目にノートを取りながら、全ての授業をこなした。時刻はすでに放課後。
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