第8話 厄災

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景は何とも思わなかったが、それを聞いたミーナは顔を真っ赤にしていた。 「や、やだ! 親父さん、変なこと言わないでください! 私たち、別にそういうんじゃ」 そこまで言って、ミーナは突然口を噤んだ。そして、すぐに景の方へと顔を向け、 「あ、あの、その、やだっていうのは別にケイ様が嫌なわけじゃないんですよ! あの、なんていうか、その、つまり、はい、そういうことです!」 最早、何を話しているのかよく分からない。 だが、そんなことよりも、景には気になることがあった。 つい先ほどから、鼻をついてくる匂いだ。 スキル嗅覚によって、銀狼並みの嗅覚と化している景は、この今まで嗅いだことのない匂いに、何故か後髪を引かれるほどの思いを抱いていた。 人間の匂いでも、獣人の匂いでもない、かといって災獣の類とも違う、不思議な匂い。 「おい、ミーナ。気づいているか? この匂い……」 「ふぇっ!? た、確かに変な匂いが混じってますね」 「しかも、かなりの速度で移動している」 「行ってみますか?」 ミーナがおそるおそる尋ねてくる。 この正体不明の匂いの正体が何なのか、正直とても気になるのは事実だ。 景にとっては何のメリットもないが、どうしても捨て置く気にはならなかった。 「行ってみるか」 言うが早いか、景とミーナは匂いを追った。幸い、すぐに匂いを発するものを見つけることはできた。 問題は、その正体だった。 景と同じくフードを被った何者かが、獣人三人組に追いかけられていた。 「ミーナ……、あれ、もしかしなくても……追われてるよな?」
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