5851人が本棚に入れています
本棚に追加
景は何とも思わなかったが、それを聞いたミーナは顔を真っ赤にしていた。
「や、やだ! 親父さん、変なこと言わないでください! 私たち、別にそういうんじゃ」
そこまで言って、ミーナは突然口を噤んだ。そして、すぐに景の方へと顔を向け、
「あ、あの、その、やだっていうのは別にケイ様が嫌なわけじゃないんですよ! あの、なんていうか、その、つまり、はい、そういうことです!」
最早、何を話しているのかよく分からない。
だが、そんなことよりも、景には気になることがあった。
つい先ほどから、鼻をついてくる匂いだ。
スキル嗅覚によって、銀狼並みの嗅覚と化している景は、この今まで嗅いだことのない匂いに、何故か後髪を引かれるほどの思いを抱いていた。
人間の匂いでも、獣人の匂いでもない、かといって災獣の類とも違う、不思議な匂い。
「おい、ミーナ。気づいているか? この匂い……」
「ふぇっ!? た、確かに変な匂いが混じってますね」
「しかも、かなりの速度で移動している」
「行ってみますか?」
ミーナがおそるおそる尋ねてくる。
この正体不明の匂いの正体が何なのか、正直とても気になるのは事実だ。
景にとっては何のメリットもないが、どうしても捨て置く気にはならなかった。
「行ってみるか」
言うが早いか、景とミーナは匂いを追った。幸い、すぐに匂いを発するものを見つけることはできた。
問題は、その正体だった。
景と同じくフードを被った何者かが、獣人三人組に追いかけられていた。
「ミーナ……、あれ、もしかしなくても……追われてるよな?」
最初のコメントを投稿しよう!