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豹人族の後ろにいる犬人族の二人は、武器である槍を構えて、景たちの様子を窺っていた。
「おい、ミーナ。何とかしてくれよ? お前が撒いた種なんだからな」
「いえ、ケイ様。私はこちらの女性を安全なところに避難させなければならないので」
お相手はケイ様がなさってください、という言葉は敢えて言わずに、ミーナはそそくさとフードの女性に近寄っていく。
ミーナがフードの人物を女性と判断したのは、ローブの上からでもはっきりとわかる膨らみからだろう。
「はぁ」
景は、諦めを含めた溜め息を吐き、怒りを露わにする豹人族の方を向いた。
ーーさすがに殺すのはマズい、よな。
「片腕千切ったくらいでェ、オレに勝った気になるなよなァ!」
豹人族の男は、敏捷性全開のフルスピードで景の後ろへと回り込んできた。
「貰ったァ!」
鋭い爪を伸ばし、景の心臓を貫こうと腕を引き絞る。
「ーー遅い」
景は、貫こうと爪撃を打ち出した豹人族のさらに背後に回り込む。
そして、「拒絶」の一言によって、豹人族を壁にめり込ませた。
残りの犬人族二人が、槍を突き出しながら突進してくるも、その二人の槍撃をサラリと躱し、豹人族と同じように壁にめり込ませた。
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