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「終わったぞ、ミーナ」
少し離れた場所にいるミーナに、声をかける。
「ケ、ケイ様! こ、この人ーー魔人族です!」
「え、魔人族?」
捲れ上がったフードから覗いているのは、獣人にも人間にも生えていない、大きな巻き角だった。
「ッ……」
自分の正体がバレても、魔人族の女性は声を発することなく、黙って口を一の字に結んでいる。
ただ、こちらを黙って睨みつけている。
交戦状態に近い種族である人間と、今し方自分を襲っていた獣人族が目の前にいれば、それも当然の反応だろう。
「言っておくけど、僕はお前が魔人だろうと何だろうと、どうにかする気はないよ」
「……?」
怪訝そうな顔をする魔人族。
“どうにかする気はない”と、敵に言われて、はいそうですかと素直に信用する奴はいないだろう。
「どうしたもんかな」
このまま、ここに魔人族を捨て置くこともできないし、かといって闘技場に連れていくこともできない。
「えーっと、とりあえず宿に連れて行きますか?」
「そうだな。まだ時間もあるし、そうしようか」
魔人族に手を差し伸ばす。
少し躊躇いを見せたが、魔人族の女性は景の手を掴んで立ち上がった。
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