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宿へと着くと、なるべく人に見られないように部屋へと連れ込んだ。
「あのー、ずっーと黙ったままですけど、大丈夫ですか?」
宿に着くまでも、着いてからも一言も発しない魔人族を心配してか、ミーナが声をかける。
「ッ……」
女性は、口を開けるが、すぐに閉じてしまった。
景はその様子を見ながら、この後のことについて考えていた。
とりあえず、宿に連れてきたまではいいが、これからどうするか。
クヨウとの決闘が終われば、ロウリー領に戻ることになるだろう。
自分の滞在だけでもここまで大事になったというのに、魔人族のおまけまで付いてきたら、もう過激派の腹も収まらないだろう。
景としても、そんな面倒は御免だ。
そうすると、このままテイヒュルに預けるのが一番だろうか。
「ケイ様! 見てください、コレ!!」
「どうした、ミーナ? ……何だ、コレ?」
ローブを脱がせると、魔人族の胸元には怪しげなブローチみたいな物が埋め込まれていた。
ブローチには宝石が嵌められているが、その宝石には爬虫類の瞳孔のようなものがあり、脈打ってるように見えた。
「これ、恐らく呪装具です」
「呪装具?」
「魔道具の一種ですよ。相手の行動を制限するアイテムです」
呪いの魔道具のことなんて、よく知っているなと感心していると、
「……あの人たち、ウロボロスが使ってるのを、この目で見ました。間違いないです」
と、ミーナが小さい声で、しかしはっきりと言った。
辛いことを思い出したのか、ミーナは口をキュッと結んだ。
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