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「いや、それよりもどうしてここに人族がいるのだ? それに先ほどの呪装具の解呪といい、一体何者なのだ!?」
矢継ぎ早やに質問するミーナだが、アシェラもアシェラだった。
体ごと乗り出して、景に質問してくる。
「拒絶」
そんなアシェラには構わず、景は彼女の胸元へと再び手を伸ばした。
景が一声発すると、呪装具が胸元からポロリと落ちた。
呪装具が胸元に食い込んでいたため、アシェラの胸元には生々しい傷跡があったが、それも景がもう一回声を発すると、綺麗さっぱり消えて無くなった。
その様子に、アシェラは呆けてただただ口を開けていた。
それほどに、ありえない現象が立て続けに目の前で起きたのだ。
「悪いけど、僕はあなたに何も教える気はない。このままテイヒュルにあなたを引き渡す。あの人は穏健派なんだし、上手いことやってくれるだろうさ」
「テイヒュルッ! い、いやだ。それだけはイヤ!!」
アシェラの顔が急に青ざめ、歯をがたがたさせて震え上がっている。
どう考えても普通じゃない。
「ど、どうしたんですか? 何をそこまで怯えてーー」
「私に呪装具をつけたのは、テイヒュル公なの! さっきの追手もテイヒュル公の私兵……。穏健派などとよく嘯いたもの。テイヒュル公こそ、過激派のボスなのよ!」
ーーなるほど。
そう言われると、思い当たる節もある。
あの会議の場でクヨウとの決闘を提案したのは、テイヒュルだ。
クヨウは話によると相当な実力者。邪魔な人間を排除するにはうってつけだ。
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