第8話 厄災

11/51
前へ
/301ページ
次へ
「いや、それよりもどうしてここに人族がいるのだ? それに先ほどの呪装具の解呪といい、一体何者なのだ!?」 矢継ぎ早やに質問するミーナだが、アシェラもアシェラだった。 体ごと乗り出して、景に質問してくる。 「拒絶」 そんなアシェラには構わず、景は彼女の胸元へと再び手を伸ばした。 景が一声発すると、呪装具が胸元からポロリと落ちた。 呪装具が胸元に食い込んでいたため、アシェラの胸元には生々しい傷跡があったが、それも景がもう一回声を発すると、綺麗さっぱり消えて無くなった。 その様子に、アシェラは呆けてただただ口を開けていた。 それほどに、ありえない現象が立て続けに目の前で起きたのだ。 「悪いけど、僕はあなたに何も教える気はない。このままテイヒュルにあなたを引き渡す。あの人は穏健派なんだし、上手いことやってくれるだろうさ」 「テイヒュルッ! い、いやだ。それだけはイヤ!!」 アシェラの顔が急に青ざめ、歯をがたがたさせて震え上がっている。 どう考えても普通じゃない。 「ど、どうしたんですか? 何をそこまで怯えてーー」 「私に呪装具をつけたのは、テイヒュル公なの! さっきの追手もテイヒュル公の私兵……。穏健派などとよく嘯いたもの。テイヒュル公こそ、過激派のボスなのよ!」 ーーなるほど。 そう言われると、思い当たる節もある。 あの会議の場でクヨウとの決闘を提案したのは、テイヒュルだ。 クヨウは話によると相当な実力者。邪魔な人間を排除するにはうってつけだ。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5851人が本棚に入れています
本棚に追加