第8話 厄災

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それに、昨日の棄権の件も、提案しているわりにあっさり引き下がった。 しかもテイヒュル自身が審判を申し出た。 クヨウ贔屓に決闘を進めるには好都合だ。 状況証拠から見れば、テイヒュルが黒である事実は高いと言っていいだろう。 しかし、物的証拠は何もない。 この魔人族、アシェラの言葉をそのまま信用するほど、景はお人好しではない。 「もし仮にそうだとしても、僕はあなたの言うことを素直に信じられない。あなたにとって、僕は敵対している種族だ。偽の情報をつかませて、僕とテイヒュルを争わせる算段かもしれないからな」 「それは、確かにそうだけれど。でも、テイヒュル公は私と君を使って、ヴォルフ公とレグルス王を失墜させると言っていたわ。私の言葉が信じられないなら、自分の目で確かめて」 「ヴォルフとレグルス王の失墜? それがテイヒュルの狙いってことか」 「ケイ様……」 ミーナが心配そうに腕にしがみついてくる。 自分の父親の名が出てきたのだから、不安がるのも仕方ないだろう。 「……わかった。この件については、僕が確かめる。それで、最初の質問だが魔人族がどうしてここにいるんだ?」 「父の……、王の側近である者が、人間の国に送り込まれたのだ。父は、人間との戦争を望んでいる……。私は、それを止めたい! そのために、レグルス王の力を借りにこようとしたの」 「その結果が、これ、ということか」 やれやれと、景は肩を上げた。 そこへ、ヴォルフが帰ってきた。 「……おいおい、こりゃどういうことだ?」
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