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「それでは、これよりケイ・ヨスガラとクヨウ・ルナールの決闘を行います!」
アナウンスに呼応するように、会場が歓声に沸き立つ。
会場を埋め尽くしている獣人のほとんどが過激派とも思えるほどの熱狂ぶりだ。
それほどまでに決闘に熱を上げる種族なのだろうか、獣人というのは。
いや、娯楽の少ないオフィーリアでは、決闘見物はかなりの娯楽なのだろう。
「はぁ」
どうして、自分がこんな目に合わなければならないのか。
そう自問せずにはいられなくなってくる。
「フン、自分の負ける姿が想像できたのか? 情けない溜め息などつきおって。空気が人間臭くなろうが」
目の前で毒づくのは、クヨウ・ルナール。三本の尾をもつ最強の狐人族だ。
鋭い眼には、人間を虫けらのように見ている、冷たい光が宿っている。あの上司あってのこの部下か。
チラリと、景はテイヒュルを見た。
テイヒュルは、正装をして景とクヨウの隣に立っている。
景が考えた作戦が上手くいけば、テイヒュルの目論見は白日のもとに晒されることになるだろう。
そうすれば、テイヒュルが今まで築き上げてきた穏健派からの信頼も地に堕ちるはず。
テイヒュルの発言力は落ち、計画は頓挫する。
とにかく、作戦が終わるまでは、この決闘を長引かさなければ……。
「双方、準備はよろしいかな?」
テイヒュルが尋ねてくる。
クヨウも、景も無言で頷いた。
「よろしい。では、これより決闘を始める。ーーレディ……ファイッ!!」
決闘の火蓋が切って落とされた。
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